NHK古代史ドラマスぺシャル「大仏開眼」
NHKの大河ドラマを含め
歴史ドラマは好きな方なんですが
今までは戦国時代モノか幕末モノが多く
特に飛鳥~奈良~平安時代には
あまり興味がありませんでした。
しかしこのブログを始めて
奈良のお寺を廻り起源や歴史を知る中で
飛鳥~奈良時代というのは大陸との交流も盛んで
隋・唐・半島から新しい文化を積極的に取り入れ
まさに日本の国創りが始まったばかりの
激動の時代であった事を知りました。
また地震や干ばつが続き疫病のパンデミックが
起こるなど現在に通じるところもありますね。
歴史小説や歴史ドラマの面白いところは
その時代を生き抜いた人達の生き様や
それぞれの人間関係が立体的に見える事です。
そして過去の時代を生きた人達も
現代を生きる私たちと同じような悩みを抱え
それを乗り越えて行く姿が
自分の人生の励みや参考になる事です。
調べてみると飛鳥~奈良時代を舞台にした
歴史ドラマは少ないのですが
以下のものが見つかりました。
2001年 NHKドラマ 聖徳太子
2005年 NHKドラマ 大化改新
2010年 NHKドラマ 大仏開眼
2009年 TBSドラマ 唐招提寺1200年の謎
今回は、吉岡秀隆さん演じる
第9次遣唐使留学生・吉備真備を主人公に
激動の奈良時代を描いた
2010年 NHKドラマ 大仏開眼 について
見どころを書きたいと思います。
歴史ドラマを見る際は大まかな歴史の流れと
登場人物の概略を知っておくとストーリーが
スッと入って来て理解し易いですよね。
このドラマのキャストは以下の通りです。
聖武天皇(國村 隼)
光明皇后(浅野温子)
安倍内親王/聖武天皇の長女(石原さとみ)
吉備真備(吉岡秀隆)
玄昉(市川猿之助)
藤原仲麻呂(高橋克典)
橘 諸兄/葛木王(草刈正雄)
行基(笈田 ヨシ)
見どころ
ドラマは734年
吉備真備と玄昉が遣唐使船で帰国途中
激しい嵐に合うシーンから始まります。
玄昉が嵐の中「海龍王経」を読み
嵐を鎮め無事日本に帰り着きます。
この時代の日本(平城京)は
それまで日本の政治を支えていた
藤原不比等が亡くなり聖武天皇が即位
長屋王が人望・政治力合わせ掌握していた時
不比等の子・藤原四兄弟が
政敵長屋王一族を策略により自殺に追い込み
聖武天皇の妃で妹の光明子を皇后にし
藤原氏(四兄弟)が聖武天皇のもとで
権力を強めていた頃で
葛木王をはじめとした古い貴族の面々は
藤原氏のその強引なやり方に反感を強め
確執が強くなっていた頃です。
唐で18年・経書/史書/天文学/音楽/兵学
など様々な学問を学んだ吉備真備は
日本に帰ると地震・干ばつにより
荒れ果てた祖国と実家を目にします。
ある日近所の子供に唐の楽器を見せていると
右大臣・藤原武智麻呂の子藤原仲麻呂が現れ
上司・葛城王(橘諸兄)邸に招かれ
さらには葛城王に異父妹の光明皇后に
この珍しい楽器を見せたいと宮中に招かれます。
平城京・宮中で聖武天皇の長女
阿倍内親王(後の孝謙天皇)と出会い
これを切掛けに安倍内親王の教育係となり
真備の異例の昇進人生がスタートします。
その後真備が平城京周辺を歩いていると
貧しく荒れ果てた庶民の生活とその中に
痘瘡(もかさ)/天然痘患者を見つけ
ますが、瞬く間に平城京内に感染。
藤原四兄弟も感染し病死します。
これを境にして平城宮内の権力バランスが変化
藤原四兄弟から橘諸兄に移りますが
吉備真備・藤原仲麻呂も出世し
聖武天皇を挟んで藤原氏と反藤原氏の
政権争いが激しくなって行きます。
唐で学んだ理想の律令国家を目指す真備
>>吉岡秀隆
藤原氏の権力拡大・維持を目指す仲麻呂
>>高橋克典
自分の不甲斐なさから庶民を苦しめ
貴族の権力争いを収められず苦悩し
仏教と大仏造立にすがる聖武天皇
>>國村 隼
その跡を継ぐが仲麻呂の傀儡にされてしまう
孝謙天皇(阿部内親王)
>>石原さとみ
この四人を中心に
激動の奈良時代が描かれて行きます…。
734年 真備・玄昉が唐から帰国
737年 天然痘で藤原四兄弟病死
738年 阿部内親王皇太子に
740年 藤原宏嗣の乱
聖武天皇関東へ行幸を始める
恭仁京に遷都
743年 聖武天皇大仏造立の詔を発す
744年 難波宮に遷都
阿積親王が藤原仲麻呂に暗殺される
紫香楽宮に遷都
745年 平城京に戻り大仏造立を再開
749年 孝謙天皇が即位
750年 真備・筑前-肥後左遷
752年 真備・2度目の遣唐副士として唐へ
東大寺大仏開眼供養会を行う
753年 真備・鑑真和上と帰国
754年 真備・九州大宰府に左遷
756年 聖武天皇崩御
758年 仲麻呂が孝謙を下し淳仁天皇を立てる
藤原仲麻呂が恵美押勝-太政大臣に
760年 光明皇后死去
764年 孝謙上皇が真備を造東大寺長官に任命
都に呼び戻す
恵美押勝(藤原仲麻呂)の乱>>
称徳天皇(孝謙天皇)即位
藤原仲麻呂(高橋克典)が策略と武力を持って
権力を強めて行く中
何度も左遷され唐に追いやられても
あくまでも法をもって仲麻呂と対峙し
粘り強く反撃のチャンスを伺う真備(吉岡秀隆)
最後は恵美押勝の乱で仲麻呂が討たれるところで
このドラマは終わります。
恵美押勝の乱は後押しのあった光明皇后の死後
望弱無人な振舞が反感を買い
権勢が衰えてゆく藤原に対し
祈祷によって(孝謙の)病気を治した道鏡が
孝謙の信任を得たことで孝謙&道鏡との
権力バランスの逆転に焦燥を深めた仲麻呂が
孝謙上皇と親密な関係にあった道鏡との関係を
淳仁天皇を通じて諫め孝謙の怒りを買った事で
軍事力による権力奪回を図った乱
と一般的に言われていますが
このドラマでは道鏡は登場せず
光明皇后死去後孝謙上皇が真備を
造東大寺長官として都に呼び戻したことが
切掛けで恵美押勝軍VS孝謙上皇(真備)軍の
戦が起きたというストーリーになっています。
真実は誰にも分かりませんが
こういうストーリーも有りかなと思い
なかなか楽しめました!
様々な困難に耐えながらも自分の信念を貫き
最後に勝利を勝ち取る。
最近のメガバンクなどをモデルにした
企業内権力闘争を描いたビジネスドラマに
通じるものがありますね。
その他
いつもは正義の役を演じることが多い
高橋克典さんが演じる狡猾で憎らしい
仲麻呂役(悪役)
謎が多く未だに真意は明らかにされていない
聖武天皇の突然の関東行幸は
このドラマでは権力争いが続き手段を選ばぬ
藤原氏の影響から逃れる為
平城京を離れ他の地に遷都することを
真備が聖武天皇に進言します。
石原さとみさん演じる阿部内親王は
天皇の長女として高慢な態度で
真備に初対面するものの真備の博学さを知り
頼りになる師として仰ぎ・学び
父・聖武の後を継ぎ孝謙天皇として
国を治めるまでに成長していきますが
真備から学んだ理想の律令国家確立には及ばず
仲麻呂の傀儡にならざるを得ない苦悩などなど
各大物俳優陣の好演も見どころです!
数少ない奈良時代のドラマですが
人々の生活描写やファッション
貴族と平民の生活差の描写など
この時代の情景も楽しめます。
また再建された実際の平城宮跡の
朱雀門・大極殿・東院庭園なども
ロケ地として使われており
見どころの1つになっていると思います。
まるでこのドラマを撮るために
再建された様ですね!!
聖武天皇・光明皇后・大仏・南都七大寺
天平文化・正倉院と聖武天皇の沢山の宝物
貴族文化・和歌・古事記・日本書記 etc
一見華やかで様々な文化が生まれた
平和な時代をイメージしがちな奈良時代ですが
実は天皇を挟んだ政治的な権力闘争-策略・暗殺
と大地震・干ばつ・疫病流行などの
天災にまみれた激動の暗黒時代であった事
だからこそ世界的にも珍しい
廬舎那大仏がこの時代に創られたのだと
理解できます。