電子辞書 PW-SH1シリーズ
<2012年> 2,013年発売
私がマネージャーに昇格して3年目に行った
電子辞書のデザイン開発ですが
これも私にとっては思い出深い仕事の1つです。
現在でもそうですが
この頃から電子辞書市場は弊社とC社
2社でのシェア争いが激しくなってきた頃です。
電子辞書は2000年に現在のような
クラムシェルタイプが発売され
(ノートPCのように蓋を開いて使うタイプ)
当初は白黒画面でしたが
2006年にカラー画面のモデルが発売されと
辞書機能だけではなく
学習コンテンツも豊富になり
それに伴い液晶画面も大型化されるなど
10年ほどの間に機能が充実し市場も拡大
特に中学生・高校生には
必須の学習アイテムになっていました。
しかし、2010年頃には
多機能・多コンテンツも限界となり
コスト競争に突入。
1円以下のコストダウンを積み重ねて
C社との最後の生き残りをかけての
競争が激化していく中
もう今までの考え方では新製品開発も難しくなり
今までの設計・商品開発の在り方など
根本的な見直しが必要になってきました。
そこで事業部は思い切って企画・設計担当課長の
大幅な入れ替えを行いました。
電子辞書立上げ期から長年に渡り設計を引張ってきた
I 課長は今までの経験・特に設計/生産を中国に移管し
設計ノウハウを伝えるとともに
スキルアップを図ってきた功績を
今度は電話機事業で展開するため電話機Gへ
新しい技術部長として中国の生産現場を経験し
状況を知り尽くしているTさんが海外から帰国し就任
技術部長&企画部長兼任として電子辞書事業開発の
プロジェクトリーダーとなりました。
T 部長は非常にアグレッシブな方で
従来の常識を全てゼロベースで見直し
徹底的なコストダウンを図るとともに
新規のお客様に充分満足して頂き
コンペチターに一気に差をつける
スペック・デザインを実現すべく
動き始めました。
例えば…
それまで当たり前の様に同梱されていた
辞書の様に分厚い取り扱い説明書。
これを廃止し、webからpdfファイルをダウンロード
する様にするとともに
電子辞書のコンテンツとして内蔵させ
電子辞書で確認出来る様にするとか…
同じく同梱されていたイヤホンも廃止。
ほとんどのユーザーは、スマートホンか
i-podのようなデジタルミュージックプレイヤー
を持っているのが普通で
家には複数のイヤホンがあったためです。
こうした今まで同梱が当たり前だったもので
現在必ずしも必要のないものは削る事で
パッケージもコンパクトになり
トータルでのコストダウンが図れ
その分高精細なタッチパネル付液晶画面にするなど
本体のスペックアップも実現することが出来ました。
NEW Design!
我々デザインも、まずは
これからの電子辞書デザインこうあるべき!
という考えのもと
新しい電子辞書のデザインに取り掛かりました。
本体デザインはプレミアム電卓をデザインした
ベテランT・Hさんと
当時若手でUXデザインからIDに転向
インテリアホンJD-BC1をデザインした
K・Mさんです。
それまで電子辞書のデザインのネックであった
単4電池のスペースと一体化された
本体開閉のための円筒のヒンジ!
これを廃止しシンプルなヒンジにすることで
本体サイズをコンパクトにしつつも
液晶サイズアップやキーレイアウトスペースを広く
従来は液晶部のふたは180°しか開きませんでしたが
ダブルヒンジを使う事で、360°開いて
タブレットの様な近い方が出来るデザインにしました。
これにより片手で持つことが可能となり
高校生が通学中電車の中でも勉強できる
学習端末になりました。
今までヒンジがスペースをとって大きく扱えなかった
メニューキーも大きく使いやすくレイアウト出来
それまで電子辞書の記号の様になっていた
大きなカーソルキーと決定キーの組み合わせを
思い切って廃止し、あたかもコンパクトな
ミニノートPCの様なデザインを目指しました。
カラーバリエーションも工夫を凝らし
ビジネスパーソン向けモデルは
ホワイト・ブラック・レッドの高級感のある3色
メインの高校生向けモデルは
男女共人気のホワイト・ネイビー
男の子向のブラック
女の子向けにマジェンタとラベンダーの5色に
ファンクションキーをアクセントカラーにして
合わせるなどファッショナブルなイメージで
まとめました。
女子高校生が憧れる少し上の世代
20代前半の女性に人気の
サマンサタバサのファッションカラーから
いくつかのカラー候補をスケッチし
社内の女子高生をお子さんに持つ社員を通し
アンケートをとり最終色を決定。
特にラベンダー色は
今まで電子辞書では使ったことが無い色だったので
企画・営業部門からは疑問の声もありましたが
ターゲットユーザーの女子高生アンケートで
人気だった為、計画台数を抑えめにして
商品化したところ見事にヒットし
量販店では品薄状況になるという結果に…。
実はこの高校生向けカラーコンセプトは
日頃からカラートレンド情報に精通している
女性デザイナーの K・T さんに
検討・提案してもらったのですが
従来の電子辞書のカラー展開とは一味違う
ファッショナブルでオシャレなカラバリが
提案出来たと思っています!
現在、このモデルから8年が経ちますが
基本設計はこのSH1シリーズを踏襲しつつ
操作キーをより大きくするなど使用性を改善し
感性度の高いモデルとなっています。
>>現在のモデル