インテリアホン JD-7C1
<2009年> 2010年発売
最も思い出深い商品の1つが
このインテリアホンシリーズです。
家庭用電話機が超成熟期に入り
各社機能差はほとんど差が無い中
いかにして差別化を図るか?
という課題に対し
弊社の強みの1つ液晶デバイスを
家庭用電話機と組み合わせる事で
どんな付加価値を生み出せるのか?
こんな開発テーマを掲げ各部門の若手社員を集めて
プロジェクトが始まったように記憶しています。
当時私はちょうど係長から課長に昇格するころで
チーム全体のディレクションが
主な業務になりつつある時でした。
実はこのプロジェクトには
直接的には参加してないのですが
デザインを担当してくれた
当時の若手実力派の Iさんと
意見のやり取りをしながら
彼のデザインを陰ながら押していました。
彼はとても優秀な若手デザイナーであり
且つ努力家でした。
若くして(20代前半)で結婚した彼は
会社のすぐ近くの社宅住まいでしたが
土曜日(休日)にこっそりと出社し
オフィスのデザイン雑誌や
自分で購入した専門誌から
デザインモチーフをピックアップし
スキャナーでデジタル化し
自分のPCにひたすらストックしているなど
私の知らないところでも
相当の努力をしていたと思います。
造形のモチーフ・素材や色のモチーフなど
テーマごとに整理されたデザインネタは
デザイン業務のテーマにより
このテーマにはあのモチーフが使えるかも…と
直ぐにアイディアの引き出しをから数案を引き出し
デザインスケッチでアウトプットしていたのです。
ですから彼の仕事はとてもスピーディーで
クオリティーの高いデザインスケッチで
はぼ1日に1案/1週間で5案ほど
アウトプット出来るほどでした。
そんな Iさん が担当してくれたのが
この初代インテリアホンJD-7C1です。
JD-7C1は7インチの液晶を持った本体… と子機の組み合わせ
本体といっても見た目はディスプレイのみ
電話機能を持ったデジタルフォトフレームです。
つまり通常通話は子機で行い
電話線と電源がつながった親機は
普段はフォトフレームや時計・カレンダーといった
生活雑貨としてリビングで使用…
お子さんが家で留守番中電話がかかってくると
かけてきた相手の顔がフォトフレームに表示される
「フォト着信」
お父さん・お母さん・おばあちゃんなら電話に出てね。
非通知なら出ないでそのままにしておけば
親機が留守番機能を起動させ
相手の名前と電話番号・用件を聞くというもので
電話をかける際もあらかじめ登録された電話帳から
顔写真を確認し、ワンタッチで電話がかけられる
「フォト電話帳」 など
いざというときに小さなお子様でも電話をかけたり
受けたり出来、また電話を使っていないときは
フォトフレームとして…
お子さんの成長写真やかわいいペットの写真を
スライドショーにして楽しんでください!
という商品です。
そして実はこの電話機
ファックスも受信できるのです。
とは言ってもプリントは出来ませんので
フォトフレーム画面で確認するだけなんですが
ファックスに使い慣れた
おじいちゃん・おばあちゃんからの
ファックスメッセージも
フォトフレーム画面で確認出来るんです!
このインテリアホンの親機(フォトフレーム部)は
背面に電話機基盤を背負っているため
BOX状の出っ張りがあり
デザイン的にはネガティブ要因だったのですが
I君はこれを一体感と張のある美しい造形でまとめ
薄いディスプレイではなく
ソリッド感のある美しいオブジェの様なデザインに
まとめてくれました。
背面のマイナスRの2次曲面は単一Rを用いた
単純なものでは無く
曲率が徐変する関数曲線=懸垂曲線を用いたもので
立体物になった時にやわらかで自然な陰影ができ
まるで石膏や陶磁器のように職人の手で撫でて
創られた様なナチュラルな美しさを感じる造形です。
おそらく彼はインテリアに飾られる
花器や陶磁器の世界観…
その隣においても違和感のない
デザインを目指したのだと思います。
Iさんの努力とこだわりの甲斐があり
このインテリアホン JD-7C1CL は
2010年 Good Design Award
を受賞することが出来ました!
Iさんはこの数年後
関東の有名電機メーカーS社に転職
現在はスマートフォンやデジタルカメラのデザインで
活躍しています!
Iさんとはこの後も様々な仕事を一緒にさせてもらいましたが
彼のデザインに対するこだわりは素晴らしく
彼と共に過ごした時間は本当に楽しく・充実した時間でした!
Iさんどうもありがとう! 益々ご活躍ください!!