カジュアルデザイン電卓 EL-M334
<2012年>
これも私の思い出深い仕事の1つです。
電卓市場は当時から国内では
弊社とCasio・Canon の3社が
シェア争いをしていましたが
そこに中国メーカーも加わり
特に台数が見込める低価格ゾーンでは
大変厳しい状況が続いていました。
計算だけならスマホでもできますが
家計簿の計算やオフィスでの出張精算など
それなりにちゃんと計算したいときは
やはり電卓があると便利ですよね。
この商品はこうした家庭での家計簿や
オフィスでのパーソナルユース向けモデルですが
純粋なオフィス向けモデルは
他にラインナップを持っていましたので
どちらかというとカジュアルな
主婦やOLさんをターゲットにした商品です。
超成熟市場で且つ海外メーカーを含め
競争が一番激しいゾーンで
各社機能差はほとんどありません。
営業部・企画部からもデザインに特化した
商品にしたいという要望を頂いてました。
他社の競合商品を見ても5色以上の
カラーバリエーションを展開する可能性が大きく
従来にない新しい視点でのカラーコンセプトが
ポイントになりそうです。
スイーツカーラーコンセプト
このカラーデザイン電卓は全員で
短期間でのアイディア出しを行いました。
1年前にインテリアホンで凌ぎを削った
ベテランのK・Tさんと
グラフィック出身のI・Jさんも入ります。
そして今回はグラフィックデザイン視点で
ユニークなカラーコンセプトを提案してくれた
I・Jさんの案を採用しました。
彼の最初の提案は、当時流行り始めていた
マカロンのカラーをモチーフにしたコンセプトです。
ターゲットユーザーも主婦&OLがメインなので
スイーツカラーというのは面白いと思いました。
但しスイーツカラーと言っても色によっては
ピンク・ブルー・グリーンといった
単色に落とし込むと他社との違いが見え難いため
メインカラーとサブカラーの組み合わせにより
誰が見てもスイーツをイメージ出来る様に
マカロンに限らずショートケーキ
アイスクリーム・ゼリーなども含め
各カラーのイメージ・スイーツ写真から
忠実に色を抜き取り、何度もスケッチで確認し
最終カラーに落とし込んで行きました。
例えばショートケーキの
生クリームとチョコレート
フルーツケーキの
スポンンジ色とトッピングされた
フルーツそのものの色などです。
本体デザインも
シンプルなフォルムを基本に
ラウンドな優しい造形イメージで
本体サイズはコンパクトでありながら
表示サイズは従来モデルより一回り大きくし
小さくても使いやすい電卓を目指しました。
カタログイメージ+パッケージデザインまでも
このデザイン電卓のポイントは
本体デザインのみならず
カタログやパッケージデザインでも
スイーツカラーコンセプトを訴求したことです。
ケーキの包装紙やパッケージのイメージを
積極的に取り入れ、パッケージを見ただけで
食べたくなるような…
そんなイメージを訴求しました。
量販店では他社商品を含め棚に吊られて販売される
電卓ではパッケージデザインも重要です。
I・Jさんは元グラフィックデザイナーのスキルを
十分に発揮し、カタログデザインから
パッケージデザインまで提案し
ディレクションしてくれました。
どうでしょうか
スイーツの電卓に見えますかね?
この仕事で I・J さんは彼の全スキルを出し切って
デザインしてくれたと思いますし
この仕事を通じて商品デザインにも
自信を付けてくれたと思います。
*このブログを書いている2020年現在では
この商品は生産終了していますが
今 Amazon・楽天で「EL-M334」で検索すると
驚いたことに発売当初の3~5倍の価格で
販売されていました。
デザインプレミアムが付いているとすれば
嬉しい限りです。